国鉄の権限と政府
つづき
国鉄倒産の2つの大きな要因の一つである労働組合について話したが、今回はもう一つの要因である国鉄財務についてである
労働問題よりこちらのほうが、国鉄倒産に対してより直接的で、より深刻な問題であった
国鉄財務の問題は「独立採算制」の一言で片付くのだが、単純に「独立採算制」が悪いという話ではない
あたりまえだが民間企業は「独立採算」な訳だからそれ自体の問題ではないのだ
では何が問題なのか?
国鉄は政府、議会、大蔵省、運輸省、行政管理庁などなどさまざまな組織に監督権が存在した
実質、国鉄には自由な経営権というものがほぼ皆無であり、ただ「独立採算」だけを押し付けられた政府機関にすぎなかったのだ
大蔵省は独立採算を理由に一切の政府補填を拒否していたし、一方で政治家は選挙目当てに地元に新線を引くことを国鉄に強要した
さらにインフレによる人件費と資材の高騰に伸び続ける需要、戦時中の酷使と老朽化による事故頻発
これらを改善するための大規模投資が必要な時期がきていたのだが、運賃収入は頭打ちであり財務は悪化し続けた
なら運賃を値上げすればよいと思うだろうが、国鉄の運賃決定権は国会にあり国鉄にはなかったのだ
国会はインフレ抑制と国鉄の公共性の観点から運賃値上げを認めなかった
政治家が地元選挙民の反発がある運賃値上げなど認めるわけがないのである
国鉄は「公共性」を求められながら「独立採算」から政府補助は認められないという状況で赤字だけがどんどん膨らんでいった